『とうもろこしの島』あらすじ,ネタバレ,解説,感想,キャスト

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エングリ川には、春の雪解けとともに肥沃な土壌の中洲が現れる。
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『とうもろこしの島』(英名:CORN ISLAND)はいかがでしょうか。

セリフが極端に少ない寡黙で静かな映画ですが、

独特な雰囲気を持った老俳優の演技力と映像の魅力で

まったく飽きさせることなくラストシーンまで引き込みます。

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映画『とうもろこしの島(CORN ISLAND)』あらすじ

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映画『とうもろこしの島』のポスター

1992年以降、ジョージア(旧グルジア)からの独立を主張するアブハジアはジョージアと激しい戦争状態にあった。

両者の間にはエングリ川が横たわっていて、その川にできる中洲がこの映画の舞台だ。

両岸で兵士が睨み合い銃弾が飛び交う中、その肥沃な土地を利用してとうもろこしの栽培を行う祖父と孫娘が『とうもろこしの島』の主人公だ。

川の中洲に渡って土壌を見る老人

コーカサス山脈から黒海に注ぐエングリ川は毎年、春の雪解けとともに肥沃な土砂を運び、中洲をつくる。

そして貧しい農家は水浸しの土地を離れ、土壌が肥沃な中洲へ移る。

長く厳しい冬を越すための食料にするため、春から秋にかけ、とうもろこしを栽培するのだ。

朝霧の中、老人が漕ぐ小舟がやがて中洲に着くところから物語は始まる。

長靴を履いた老人は、中洲に降り立つや否や、地面を長靴の底で蹴りつける。

鼻が大きく日焼けしてゴツい顔の老人は中洲を歩き、しゃがんで土を手で掬い、口に運ぶ。

土壌の善し悪しを見たのだ。

跪いてさらに土砂の状態を確かめた老人は、何か分からないが人工的な小さな物を見つける。

おそらく昨年の耕作者が残した物だろう

老人は、白い布をつけた枯れ木の幹を土にさす。

「ここは一番乗りしたワシの土地だぞ」という目印だろう。

老人は丸太を舟に積んで戻ると、小屋造りを始める。

「おじいちゃん、ここ彼らの土地?」「耕す者の土地だ」

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「あの人たち、ジョージア人?」と祖父に尋ねる。

後日、おそらく幼い頃から大切にしているであろう薄汚れた人形をを手に持った、顔がそばかすだらけの10代の少女を、老人が小舟に乗せて中洲にやって来る。

川に魚獲りのワナを仕掛けながら小屋造りを進める。

モーターボートに乗った兵士たちが川を下っていく。

「あの人たち、ジョージア人?」

うなずく老人。

「おじいちゃん、ここ彼らの土地?」

2人は祖父と孫娘のようだ。

「彼らの土地はあっちだ」と指差す老人。

「じゃあ、ここは誰の土地?」

「耕す者の土地だ」

どうやら早い者勝ちのようだが、このシーンで初めてのセリフ、会話がなされる。

2人の会話に出てきたジョージア人というのは、ジョージア国(旧グルジア)の民のことで、老人とその孫はアブハズ人(Abkhaz)で、ジョージアから独立しようと戦う側の民だ。

ここが外国人には分かり難く、筆者も最初ジョージアの映画だから、てっきり2人はグルジア人かと思った。

自然の中での穏やかな日常と

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とうもろこしの種を運ぶ。

先程仕掛けたワナを引き上げ、獲った魚の鱗を掻き落とし、内臓を取って、焼いて食べる。

残った魚は塩をまぶして天日干しする。

小屋が完成したら次は土を耕して種を撒く。

ある日、銃声と兵士たちの声が聞こえるが、老人は耕し続ける。

夕方には家に帰るがまた次の日にはやって来て、種を撒いたりの農作業が続く。

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せっかく耕した土地も嵐で削られた。

嵐が来て、せっかく耕した土地が削られるが、2人は淡々と再び農作業を続け、とうもろこしは芽を出し、成長してゆく。

が、夜中に手負いの鹿を追って来た猟師たちが、やっと膝のあたりまで伸びたとうもろこしを踏みつけてダメにしてしまった。

そこで2人は寝具を運んで小屋に寝泊まりすることに。

小屋の中の壁板に、少女はあの人形を掛ける。

中洲の少女を冷やかす兵士たちを祖父が銃で威嚇

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川で衣服を洗っていると向こう岸からはしゃぎ声が

孫娘が川で衣服を洗濯していると、向こう岸で若い兵士3人が、はしゃいでいる声が聞こえる。

彼女を双眼鏡で見たり、「ねえ、君の名前は?」と叫んだり、指笛を吹いたり。

祖父が小屋の戸を開け、中に入るよう手招きし、孫娘が小屋に入ると祖父がライフル銃を持って小屋から出て、空に向かって威嚇射撃。

ボートに乗ったジョージアの兵士たちが川を上っていき、お互い会釈を交わす。

(兵士のうちの一人がじっとこちらの少女を見つめていることに注意しよう)

負傷したジョージア軍の士官を2人は助けるが…

ある時、祖父が寝ている間に薪を集めに行った少女が異変に気づく。

祖父は、とうもろこし畑の中に負傷して倒れている男を見つけ、小屋に運ぶ。

アブハジア軍の兵士たちがボートでやって来てボートから尋ねる。

「おはよう、じいさん。危険な場所を選んだな。よそ者を見てないか?」

首を横にふる老人。

老人はウソをついたわけだ。

とうもろこし畑から負傷した兵士を小屋に運び手当をしてやる。

回復した青年にはアブハジアの言葉は通じない。

彼は対岸のジョージアの兵士で、言語が違うからだ。

ジョージアの青年兵と戯れる少女と祖父の厳しい目

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老人が手当して元気になったジョージアの負傷兵士

少女は、ジョージアの兵士に惹かれる。

薪を切る手伝いをするジョージア兵の後ろから少女が水をかけるという悪戯(いたずら)をすると、兵士は少女の後を追う。

背丈以上に育ったとうもろこしの中を駆け抜け、川の水を掛け合ってはしゃぐ2人。

彼女の濡れた薄手の衣服は濡れて、小さな乳房が透けて見える。

少女にとってはたわいもない幼い子の遊びだし青年士官も少女と遊んでやっているだけなのだが、男はりっぱな大人だ。

その様子を見てしまった老人は、怒りの表情を士官に向ける。

負傷したジョージアの士官を追ってアブハジア兵がやって来た

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アブハジアの士官は老人が兵士を匿っているのではないかと疑う。

娘を家に帰した後、アブハジア兵たちがボートでまたやって来る。

「暮らしはどうだ?どうした?我々と会うのが嫌そうだな」

疑う兵士たちに、黙って困った表情をする老人。

「ボーリヤ、よせ。困らせるな」ともうひとりの兵士。

「じいさん、飲み物はあるか?」

「ワインしかありません」

むしとありがたいとボートから降りる兵士たち。

とうもろこしの陰から様子を伺うジョージアの士官。

緊張の一瞬だ。

アブハジアの兵士たちにワインを振る舞うと、「ここの生活は快適なようだな」と最後まで疑いの目を向けていた隊長らしき兵士が言い残して去る。

その様子をジョージアの士官は川の中から窺っている。

老人は兵士たちのボートを押しながら尋ねる。

「何をお捜しですか」

「敵兵を追っている。負傷しているから遠くには行けないはずだ」

負傷兵は寸前のところで川に入り、間一髪で見つからずに済む。

老人は、川に浸かって冷えたジョージア兵の体を焚き火で温めてやる。

今度はジョージア兵がジョージアの青年士官を探しに

次に老人が中洲に戻ると、ジョージアの青年兵士の姿はなかった。

今度は見慣れないジョージアの兵士たちがボートでやって来た。

「おはよう。友人を捜している」

「我々以外はここにはいません」

老人はどちらの側にも与(くみ)することはしたくないのだろう。ここでもウソをついたわけだ。

涙がこぼれ落ち嗚咽する少女

少女が川に入って遊んでいると、また岸の兵士たちが「こっちにおいで」と声を掛ける。

怯えてとうもろこし畑の中にしゃがみこむ少女。

収穫期を迎えたとうもろこしを運ぼうとして手を切ってしまい、その傷をなめる少女の頬に突然、涙がこぼれ落ち、嗚咽(おえつ)が…。

祖父はとうもろこしを隔ててはいるものの孫娘の辛さを知ってもただ耐えるしかない。

『とうもろこしの島』予告(YouTube)

『とうもろこしの島』を観終わった感想

セリフが少ないが退屈しない

こんなにセリフの少ない映画はかつて観たことがない(と思う)。

と言うと退屈な映画を連想するかもしれないが、

35ミリフィルムで撮影された美しい映像だけで十分魅了される。

この爺さんは何をしようとしてるんだろう、

この少女は何歳だ?親はいないようだがどうしたんだろう、

こんな中洲に畑をつくってだいじょうぶだろうか、増水しないのか?

紛争地域のようで時々、銃声が聞こえるけど弾は飛んで来ないのか?

10代の女の子がこんなところにいてだいじょうぶなのか、

少女が大切にしている人形は誰にもらったものだろうか、

などなど頭に数々の疑問符が湧いてきて、画面から目が離せない。

自然が厳しかろうが紛争地だろうが農民は中洲での栽培を続けて来た

貧しい農民が中洲の土壌が良いことを知って農作を始めたのはいつ頃からだろうか。

何百年も前からだろうか、それとも千年以上も前からだろうか。

エングリ川はその遥か昔から肥沃な土砂をコーカサス山脈から運んでは中洲を形成して来たのだろう。

いつの日かその土地の人々はその肥えた土を利用して農作を行うことを思いついた。

だが自然は甘くない。

あっという間に人々の努力を無に帰してしまう。

しかしそれでも農民は中洲での農作をやめようとはしない。

紛争で銃声が聞こえようが弾が飛び交おうが、自然や農民には関係ない。

農民は淡々と、とうもろこしを栽培し、収穫する。

自然は容赦なしに雨を降らせ、風を吹かせる。

老人と孫娘がいなくなってもまた別の農民が中洲に畑をつくり耕し種を蒔く。

そうやって何百年の時が過ぎて来たのだ。

少女が少女でなくなっていくサブストーリー

わずかに膨らみ始めた胸を衣服越しに覗き込むシーンや、初潮を迎えてとうもろこしの葉を汚すシーンがあるが、

メインのストーリーとは別に、従順で無垢な少女が大人の女に成長して行く過程も描かれている。

幼い頃には平気だったろうが、もはや祖父の前で着替えたり裸になったりはできない。

祖父の眠っている時などにそっと着替えたり、川で体を洗ったりするが、何か起きやしないかとハラハラする。

鑑賞後時間が経過しても心に残り続ける映像

筆者が最初に観てから1ヶ月ほどが経ったが、映像が頭の中に鮮明に残っていて、忘れられない。

観たらすぐ忘れてしまう、セリフが多くてドンパチ、カーチェイス等の派手な演出で面白いハリウッド映画とは対極にある。

語らないことで語るところなどに日本的な感じがある、日本人の心に響くものがあるなと思ったら、ギオルギ・オヴァシュヴィリ監督は新藤兼人監督の『裸の島』(1960)の影響を受けているようだ。

ジョージアとジョージアから独立しようとするアブハジア

↑エングリ川(Enguri River)

ジョージアがどんな国か、ジョージアと対立するアブハジアとは? 日本人には馴染みが薄いと思うのでWikipediaから引用させてもらう。

コーカサス山脈の南麓、黒海の東岸にあたる。北側にロシア、南側にトルコ、アルメニア、アゼルバイジャンと隣接する。古来数多くの民族が行き交う交通の要衝であり、幾度もの他民族支配にさらされる地にありながら、キリスト教信仰をはじめとする伝統文化を守り通してきた。また、温暖な気候を利用したワイン生産の盛んな国としても知られる。
なお、本項では2015年4月以前の国家名称については「グルジア」、それ以後については「ジョージア」と表記する。また、「グルジア語」「グルジア紛争(南オセチア紛争)」など、すでに完全に定着したものについては「グルジア」を使用することとする。いまだに著しい混乱があるが米国のジョージア州とこの国は何ら関係がない。

引用元:Wikipedia

一方、川を隔ててジョージアからの独立を目論んでジョージアと戦って来た地域はアブハジア自治共和国。

事実上、アブハジア共和国(アブハズ語)として独立状態にある。その独立は国際的には認知されていなかったが、2008年8月26日にロシアが承認。また、2008年9月にニカラグアが、2009年9月にベネズエラ、12月にはナウル、そして2018年5月にシリアが独立を承認した。

参考:Wikipedia

『とうもろこしの島』制作データ

初公開 2014年7月
国 ジョージア
時間 1時間40分

『とうもろこしの島』受賞歴

2014年7月に開催された第49回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭(チェコ)で最初に公開され、クリスタルグローブとエキュメニカルジュリー賞を受賞した。

また、第87回アカデミー賞の最優秀外国語映画の候補としてジョージア州のエントリーにも選ばれ、1月の最終選考に残った。

『とうもろこしの島』配信

『とうもろこしの島』キャスト

老人:イリアス・サルマン(İlyas Salman)1949年1月14日生まれ。トルコの俳優、映画監督、作家、脚本家、ミュージシャン。2012年にアダナゴールデンボル国際映画祭の最優秀俳優賞受賞。民族は、Alevi Turkmen(アレビトルクメン)と明かしている。

少女:マリアム・ブトゥリシュヴィリ(Mariam Buturishvili)新人。1998年11月18日生まれ。

ジョージア兵:イラクリ・サムシア(Irakli Samushia )

アブハジア士官:タメル・レヴェント(Tamer Levent)1950年10月13日生まれ。トルコの俳優、監督、アートディレクター、作家。アンカラ音楽院卒。

『とうもろこしの島』クリエイター

監督:ギオルギ・オヴァシュヴィリ(Giorgi Ovashvili)他の監督作品:『The Other Bank』

ギオルギ・オヴァシュヴィリ監督と孫娘を演じたマリアム・ブトゥリシュヴィリ

脚本:ヌグザル・シャタイゼ(Nugzar Shataidze)、Roelof-Jan Minneboo,、ギオルギ・オヴァシュヴィリ(Giorgi Ovashvili)

プロヂュース:Nino Devdariani, Eike Goreczka, Guillaume de Seille, Karla Stojakova, Sain Gabdullin, Gabor Ferenczy

音楽:ヨシフ・バルダナシュヴィリ(Ioseb Bardanashvili)

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