映画『ブランカとギター弾き』ピーターとセバスチャン秘話、あらすじ、ネタバレ、キャスト

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静かに感動する映画を見たいのですが教えてもらえますか。

そんなあなたの質問にお答えします。

それは『ブランカとギター弾き』という映画です。

フィリピンのスラムを舞台に孤児の少女と盲目のギター弾き爺さんの絆を描き、

多くの国際映画祭の賞を受賞した日本人監督のイタリア映画です。

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タップで飛ぶ目次

『ブランカとギター弾き』あらすじ

クラブでギターを奏でるピーターと歌うブランカ

スラム街の孤児が夢見る母の温もり

フィリピンのスラム街に住むストリートチルドレンの少女ブランカ。

11歳の彼女は、路上生活をしながら道行く人に「お恵み」をねだったり、時にはスリを働き、たくましく生きている。

父親は分からず、母親はブランカを捨てていなくなってしまった。

ある時、通りがかりにテレビを見ている男のところで立ち止まり、有名女優が4人のストリートチルドレンを養子に引き取った話をそのテレビで見る。

それを見ていた男が、「俺におカネがあったら買いたいよ」というのを聞き、ブランカは「いくらで買える?」と尋ねる。

そのおじさんは、「3万ペソぐらいだな」と答える。

幼いブランカはそれを聞いて3万ペソ貯めれば母親が買えると思ってしまった。

3万ペソは日本円に単純換算すると、約6万6千円。

実際の価値を考えると、フィリピンの平均年収は23万ペソ、日本は440万円ほどだから、20倍近くの価値があることになる。

つまり、日本円では120万円ほどといったところだろうか。

老いたギター弾きとの出会い

そんな折、路上でギターを弾いて稼ぐ老人にブランカは関心を持ち、ポケットから小銭を取り出し、投げ銭を缶に入れるが、翌日は缶のおカネを盗んでしまう。

そのギター弾きは盲目だからこそ勘が鋭く、

「きのうはおカネをくれたのに、今日は盗むのかい?」

とブランカに話しかける。

「まあいいさ、持っていきな。でも朝食代だけ残しといておくれ」

それがきっかけでギター弾きのピーターと親しくなったブランカは、「盲目のおじさんにお恵みを」と缶を持って通行人からおカネを集めるようになった。

「さあ少し持って行きな」とピーターからおカネをもらい喜びながら空き地に勝手に作った棲家に帰ると、その棲家は壊されていた。

涙が頬を伝わり茫然とするブランカ。

翌朝、パトカーのサイレンに目をさますと、ピーターが警官から

「おカネがないなら失せろ。サンフェルナンドにでも行け。稼げるぞ」

と言わているのを耳にする。

ピーターは、警官に賄賂を渡して路上のギター弾きを許してもらっていたのだ。

サンフェルナンドへ行くはずが騙されて

ブランカは15歳だと偽ってピーターを強引にサンフェルナンドへと誘う。

おカネを払ってトラックの荷台に乗せてもらいサンフェルナンドに向かう。

そのトラックに積まれた鶏を見てブランカが尋ねる。

「なぜ鶏は羽があるのに飛べないの?」

ピーターは答える。

「飛べるさ。海だって渡れるんだ」

同乗者が加えて言う。

「昔は飛べたってじいさんが教えてくれた。人間に甘やかされて飛ばなくなったって」

(この鶏が飛ぶ話はストーリーの布石になっていて、終盤に回収される。)

着いた先はサンフェルナンドではなかった。

ブランカが「サンフェルナンドじゃない」とトラックの者に文句を言うと、

「似たようなもんさ」と返された。「カネはもう俺のものだ」

騙されたのだ。

「おカネを返して!」と言ってもトラックは無視して走り去ってしまう。

「3万ペソで母親を買います」のチラシを街中に貼って歩くブランカ

が、2人はそこで、ピーターがギターを弾きブランカが缶を持って「盲目のおじさんに」と言って回りおカネを集める。

ついでにスリも働く。

電信柱に貼られた指名手配のポスターを見て、「3万ペソで母親を買います」というチラシづくりを思いついたブランカは、路上の業者にチラシをつくってもらい同じく路上のコピー業者にコピーしてもらい、それを街中に貼って歩く。

その夜、路上を歩く男からサイフをスッた時、1人の少年が「俺のシマで何してる?」とブランカを問い詰める。

ブランカが手にしていたチラシの残りを見て、「母親を買うだと?3万ペソ持ってるのか?」

それを聴きつけたオカマのタチンボが声をかける。

「アタシならママにもパパにもなれる。いい加減にしなさい。縄張りで威張っている仔犬みたいよ。大事なところを食いちぎるよ」

と言ってブランカを逃してくれた。

ここでブランカは2人のストリートチルドレンに出会う。

1人はブランカに食ってかかった兄貴分のラウル、もうひとりは弟分のセバスチャン。

ラウルはセバスチャンに、ブランカを見張るように命令する。

ブランカの美しい歌に魅了される人々

ピーターはブランカに「一緒に歌おう。歌を覚えたら稼げるようになるぞ」と言ってブランカに歌を促す。

美しい声で歌うブランカ。

あるクラブのオーナーがそのブランカの歌を聴き、自分の店で歌わないかと声をかける。

ブランカは食事と寝床つきで月1,300ペソという条件で了承する。

体を洗って着替えてからクラブに来るようオーナーから言われた2人は、

衣料品店のテレビで放送されていた戦争映画に、ピーターがつぶやく。

「目の見えない人間ばかりなら戦争は起こらない。見えるものにこだわり過ぎだな」

「これは映画よ」

「映画も現実と変わらないさ」

クラブのステージでのブランカの美しい歌声の評判は上々で、彼女の歌目当てに来店する人まで出てくる。

幸せになりかけたブランカに濡れ衣

部屋も与えられ、美味しいい贅沢な食事にもありつけた。

新しい服も与えられ、遊園地にも行けるようになった。

ところが順調に見えたブランカの身に思わぬピンチが襲う。

自分の部屋をブランカに奪われたオーナーの下で働く男がブランカをはめたのだった。

ブランカがおカネを盗んだという濡れ衣を着せられ、彼女が必死に貯めたおカネもオーナーに取られ、2人は店を追い出されてしまった。

バックパッカーからスチールカメラマン、映画監督になった長谷井監督

監督は、世界を旅する元バックパッカーであり、写真家としても活躍する『W / O』『LUHA SA DESYERTO』などの長谷井宏紀監督。

『ブランカとギター弾き』は同監督の初の長編映画だ。

正直なところ長谷井宏紀監督って?と思う人がほとんどだと思う。

というのも、これまで、アーティストのPVの撮影や映画・ファッション・広告などのスチール撮影で活躍してきたというものの、日本国内で表舞台に出ることは稀だったからだ。

この映画を観ると、ほとんどの日本人は、日本に生まれて良かったと感じると思うが、監督はそんなことを伝えたかったわけではない。

お涙ちょうだい」でもなく、かといって極貧な社会を非難、糾弾するのでもなく、たくましく明るく生きる人々への限りなく優しい視線が感じられる作品。

出演者の大半は、路上でキャスティングされた素人

主役のブランカ以外のメインキャストは路上で見つけたという。

ギター弾きのピーターはこの映画になくてはならない存在で、監督は彼とじゃないと映画を作りたくなかったので、何とかして見つけ出したかったという。

ブランカに協力するセバスチャン役も2ヵ月半かけて、毎日朝から晩までスラムを歩き回って、やっとイメージに合う少年を見つけ出したという。

ラウルとセバスチャン

ブランカ役のサイデル・ガブテロは、大人になる前の少女を自然体でいきいき好演している。

盲目のギター弾きピーター役のピーター・ミラリは、監督によれば「プレイボーイ」だったそうで、よくモテたそうだ。

にじみ出る魅力から、さもありなんという印象だ。

「モテた」と過去形で書いたのは、ピーターは残念なことにヴェネチア映画祭初上映の数日後に他界した。

エンドロールでは「彼の魂はこの映画と共に今も世界中を旅している」と。

ブランカの歌

盲目のギター弾きピーターがブランカに教える歌の名は「愛しい人」という意味の「カリノサ(Cariñosa)」。

ブランカが歌うこの歌がまた素晴らしく、心に響く。

曲は素朴で温かいメロディが印象的なスペイン生まれのものだが、フィリピン人にとっては子どもから大人までが愛する民族音楽とも言えるフォークダンスの曲だ。

劇中歌は、この曲に長谷井監督が詞をつけ、アスカ・マツミヤ、シャラー・モンテロがタガログ語に翻訳したものだ。

長谷井監督作の詞は以下。

ブランカの歌

道端に小さな家があった
段ボールとゴミで できていた
月が泣いて雨が降ると
小さな家は流されてしまう
でも信じる勇気があれば
家は船になって虹色の海に
魚は私たちの旅に寄り添い
立てる水しぶきは夢のよう

ひとりぼっちの夜も
空を見上げれば
流星があなたの夜を照らしてくれる
太陽が眠っている間
朝が私の手をとって
彼女の光と美しさの中に私を運んでくれる

母は私たちに最初の息吹を与え
この美しい世界に
母を待つ小さな家がある
あなたの夢の中で鳥たちが
空高く舞って歌うのを見たわ
あなたの夢の中で花たちが
運んでくるの 喜びを夏に

裸足で傷ついた私の足
大地が泣いている
黒いアスファルトの下で
でも信じる勇気があれば
草達が私の靴になって
あの日の傷は治って
みんなと手を繋いでダンスを踊る

ひとりぼっちの夜も
空を見上げれば
流星があなたの夜を照らしてくれる
太陽が眠っている間
朝が私の手をとって
彼女の光と美しさの中に私を運んでくれる

母は私たちに最初の息吹を与え
この美しい世界に
母を待つ小さな家がある
あなたの夢の中で鳥たちが
空高く舞って歌うのを見たわ
あなたの夢の中で花たちが
運んでくるの 喜びを夏に

私は私たちの庭にいた
そしてその庭には私の小さな子供
さあ 私たちの家に帰ろう
さあ 私たちの家へ

20代の時にフィリピンのゴミ山で経験した体験が根っ子に

彼は、20代の時に初めて訪れたフィリピンのスラム街のゴミの山で遊んでいるストリートチルドレンたちと仲良くなり、一緒にゴミのクリスマスツリーを作ったりして遊んだ。

子供たちにアイスクリームを奢ってやろうとしたら、リーダー的存在である男の子から、

「おい、コウキ、やめろよ。俺がお前に奢(おご)ってやる」

と言われたそうだ。

その子は当時なんと8歳ながら、彼なりのプライドがあったようふだ。

「その出来事に衝撃を受けて人生が変わった。初めて目が開いた気がした。それからずっと海外を放浪する暮らしになった」

『ブランカとギター弾き』が生まれるまでの経緯

谷井が世界を旅した中で、最も長く滞在したのがセルビア共和国だった。

以前、長谷井が撮った短編が、ある映画祭でグランプリを獲得したのだが、その映画祭を主催していたのが、映画監督のエミール・クストリッツァ(Emir Kusturica)。

セルビアの映画監督のエミール・クストリッツァ(Emir Kusturica)image:Wikipedia

エミール・クストリッツァ(Emir Kusturica、セルビア語: Емир Кустурица、1954年11月24日 – )は、旧ユーゴスラビアのサラエヴォ(現ボスニア・ヘルツェゴビナ領)出身の映画監督、音楽家、俳優。クストリッツァ自身はサラエボ出身だが、父はセルビア人、母はモスレム人であり、自身はユーゴスラビア人であると称している。カンヌ国際映画祭の最高賞パルム・ドールを2度受賞しているのをはじめ、世界三大映画祭すべてで受賞している。

引用元:Wikipedia

エミールは『ブランカとギター弾き』に下記のような賛辞を贈っている。

「強く心に響き、私を幸せにした。なんて美しい映画だろう」

彼が住むセルビアの村でプロデューサーのカール・バウハウトナー(通称、バウミ)と長谷井は出会い、一緒に映画制作をすることになった。

ところが、とにかく思うがまま全部で12本の脚本を書いたのだが、全部ボツにされた。

そうこうしているうちに、バウミが他界し、その企画も消えてしまった。

失意のうちに帰国した長谷井だったが、それから1年半ほど後、プロジェクトに参加していたイタリアのプロデューサーから連絡が入り、

「このまま終わらせることはできない。僕たちは映画を作ってバウミに何かを返さなきゃいけない」

と言われた。

そこで、フィリピンのストリートチルドレンを主役にした映画の企画を立て、ヴェネツィア国際映画祭の出資のもとに映画を制作できるプロジェクトの「カレッジ・シネマ部門」に応募するため、1枚の企画書と15分の短編映像を送った。

その結果、長谷井の企画は選考に残り、映画の制作が始まった。日本人では初めての快挙だった。

『ブランカとギター弾き』予告編(YouTube)

『ブランカとギター弾き』配信VOD

『ブランカとギター弾き』を配信しているVODは、以下のとおり。

Amazonプライム・ビデオ

dTV

『ブランカとギター弾き』キャスト

ブランカ→ サイデル・ガブテロ(Cydel Gabutero)
ピーター→ピーター・ミラリ(Peter Millari)
セバスチャン→ジョマル・ビスヨ(Jomar Bisuyo)
ラウル→レイモンド・カマチョ(Raymond Camacho)

『ブランカとギター弾き』クリエイター

監督・脚本→長谷井宏紀(Kohki Hasei)

image : アノレ

長谷井 宏紀(はせい こうき、1975年 – )は日本の映画監督、脚本家、写真家。岡山県岡山市出身。アノレ所属。映画監督/フォトグラファーとして国内外で幅広く活躍。

2008年、アカデミー賞ノミネート作品『モンゴル』(セルゲイ・ボドロフ監督)ではスチールフォトグラファーを務め、俳優として出演もはたす。
2010年、KustendorfInternational Film and Music Festivalにて短編映画『GODOG』でグランプリ(金の卵賞)を受賞。
2012年、『LUHA SA DESYERTO(砂漠の涙)』(伊・独合作)をオールフィリピンロケにて完成させた。
ファッションフォトグラフィーや、アーティストのミュージックビデオなども手掛けている。
2014年、ヴェネチア映画祭「カレッジシネマ部門」にて日本人として初めて選出され、イタリア・フィリピン合作の長編映画『BLANKA』を製作。(2015年9月 ベネチア映画祭にてプレミア上映)その他のクリエイター

引用元:ANORE

製作: フラミニオ・ザドラ(Flaminio Zadra)
制作: アヴァ・ヤップ(Ava Yap)
撮影: 大西健之(Takeyuki Onishi)
編集: ベン・トレンティーノ(Benjamin Tolentino)
助監督: マリネット・ルハンサ(Marinette Lusanta)
音楽: アスカ・マツミヤ(Aska Matsumiya)/ アルベルト・ボフ(Alberto Bof)/フランシス・デヴェラ(Francis de Veyra)
美術: ミミ・サンソンヴィオラ(Mimi Sanson Viola)
衣装: アーミィ・クシェラ(Armi Kushella Sanson)
録音: マーク・ロキシン(Mark Locsin)

『ブランカとギター弾き』データ

  • 国/イタリア、日本
  • 上映年/2015年
  • 上映時間/75分
  • World Sales/M-appeal [Germany]

受賞歴

  • Braunschweig International Film Festival 2018: Kinderfilm
  • Internationales Filmwochenende Würzburg 2018: Kinder- und Jugendfilm
  • International Thessaloniki Film Festival 2017: Youth Screen
  • Internationales Film Festival Mannheim-Heidelberg 2017: Kinderfilme
  • Bengaluru International Film Festival 2016: Netpac
  • Brussels Film Festival 2016: Panorama Outsiders
  • Cairo International Film Festival 2016: Festival of Festivals
  • Festival Internacional del Nuevo Cine Latinoamericano 2016: Ficción
  • Filmfest München 2016: Kinderfilmfest
  • Göteborg Film Festival 2016: Nya röster
  • Mostra Internacional de Cinema 2016: International Perspective
  • Busan International Film Festival 2015: A Window on Asian Cinema
  • Kolkata International Film Festival 2015: Asian Select – NETPAC Award
  • La Biennale di Venezia 2015: Biennale College – Cinema
  • Taipei Golden Horse Film Festival 2015: Windows on Asia
  • Tallinn Black Nights Film Festival 2015: Just Film

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