『アンオーソドックス』あらすじ(ネタバレ)と解説と感想。[エミー賞の心に残るドラマ]

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©️Netflix(画像以下同)
はてなちゃん

心に残るドラマを紹介してください。

そんなあなたのご要望にお応えします。

ニューヨークにはユダヤ教の古くからの教えを厳格に守って暮らすオーソドックス(超正統派)と呼ばれる人々がいる。

今回紹介するドラマは、そこで暮らす19歳の女性が主人公だ。

結婚という新たな人生の始まりに心を弾ませていた彼女だが、実際の結婚生活は苦痛の日々。

耐えられなくなった彼女は密かにコミュニティを脱出し、母親が住むドイツへ向かう。

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『アンオーソドックス』あらすじ

エスティは19歳で結婚。ユダヤ教超正統派の教えでは女は10代のうちに結婚しなければならない。

19歳のユダヤ人女性であるエステル・シュワルツはヤコブ(通称ヤンキー)と結婚し、エステル・シャピロとなった。

通常エスティと呼ばれるエステルは、ニューヨーク市ブルックリンのウィリアムズバーグにあるユダヤ教の超正統派コミュニティで厳しい戒律の下、結婚生活を送る。

しかし、夫との性交がなかなかうまくいかず、妊娠を待ちわびる義母からの圧力や干渉に苦しむ。

1年経っても妊娠しないエスティに対し、ヤンキーは離婚を告げる。これも姑の意向だ。

離婚を言い渡されたエスティは、妊娠を隠したまま周囲には黙ってコミュニティを脱出し、幼い頃に生き別れた母親が住んでいるドイツのベルリンに飛ぶ。

ベルリンで世俗的な新たな生活を見い出し、彼女が従って来た教えを否定した日々を過ごす。

彼女が妊娠していることを知った彼女の夫は、ラビ(ユダヤ教の司祭)の命令で、彼女を連れ戻すために彼のいとこと一緒にベルリンに向かう。

『アンオーソドックス』登場人物

エステル(エスティ)・シャピロ 主人公。19歳で結婚させられ、義母などからしつこく妊娠するためのセックスを干渉される。

ヤコブ(ヤンキー)・シャピロ エスティの夫。母親の言うことが大事なマザコン。

モイシェ・レフコヴィッチ ヤンキーのいとこ。借金をチャラにする条件でラビからエスティを連れ戻すよう命じられる。

リア・マンデルバウム エスティの母親。エスティが幼い頃、ドイツへ去り、介護の仕事に就いている。

マルカ・シュワルツ エスティのおば。エスティに結婚話を持って来る。

バビー エスティの祖母。母親に代わってエスティを育てた。

ロバート 音楽院の友人。エスティと深い関係に

ヤエル 音楽院の友人。イスラエル人女性

サリム 音楽院の友人

ダシア Dasia 音楽院の友人。黒人女性

『アンオーソドックス』ストーリー詳細

詳細ストーリーはここをクリック
ネタバレあり

Episode-1

丸刈りにされ涙するエスティ。結婚するにあたり女性は髪を刈らねばならない。丸刈りにスカーフかウィッグをかぶる。

ニューヨーク市ブルックリンのウィリアムズバーグに住むユダヤ教超正統派(オーソドックス)の女性で19歳のエスティ。

父親は酒浸りの放蕩息子で、母親はエスティが幼い頃に出て行き、祖母のバビーとおばのマルカに育てられた。

そんなエスティに縁談があり、相手の母親に品定めされた後、結婚することに。

しかし結婚後1年ほどでエスティは、わずかな荷物だけを持って逃げ出す。

彼女は幼い頃に生き別れた母親が住んでいるドイツ・ベルリンの住居に向かうが、母親が女性のパートナーにキスするのを目撃し、黙って去る。

立ち寄ったコーヒーショップで、エスティはコーヒーを注文する若い男ロバートに出会い、惹かれる。

エスティはロバートたちの後を追い、シャルハルム音楽院に入り込み、リハーサルの演奏を聴き、深く感動する。

実はエスティは音楽が好きで、3年前から隠れてピアノを習っていたのだ。

リハーサルの後、ロバートたちが湖に行くと聞いて、一緒について行く。

ヴァン湖の畔には、1942年にナチスがホロコーストを決定したという別荘がある。

また、かつては東ドイツから西ドイツに逃げようとすると射殺されたが、今は自由にどこまでも泳げると音楽院の友人からエスティは聞く。

ビーチでエスティは湖に入る時、かぶっていたカツラを思い切って外し、丸刈りの髪を露出させ、カッコいいと褒められる。

エスティはヴァン湖でカツラを脱ぐ。これはユダヤの法に背く行為で、象徴的。

一方、ニューヨークに残されたエスティの夫ヤンキー・シャピロは、彼女が行方不明になっていることに気づく。

回想シーンで、エスティがヤンキーと結婚する準備をしている時、エスティの母親が現れ、ドイツ国籍取得するための書類をエスティに渡す。

エスティの父親はドイツ生まれだから、国籍が取れるということだった。

Episode-2

エスティを追って夫のヤンキー(右)とそのいとこのモイシェがベルリンに降り立つ。円筒形のケースには儀式や安息日にかぶる皮の帽子シュトライメルが入っている。
ホテルでNYヤンキースとNYメッツの帽子に替える2人

エスティは音楽院に隠れて寝ていたのを掃除婦に見つかってしまう。

エスティは音楽院の教授から、並外れた才能と特別な事情がある者のために設けられた「特別訓練プログラム」があることを知らされる。

エスティは、「特別な事情ならあります」と、申請書を書く。

その際、住所が必要だと言われたエスティは、母リアの住所を記す。

こうしてエスティはピアノのオーディションを受けられることになったが、音楽院の友人に招かれたエスティは、彼らからピアノの演奏をリクエストされる。

ところがエスティの演奏を聴いた友人の1人である女性ヤエルが、エスティの演奏を音楽院生のレベルには程遠いと指摘する。

エスティはショックを受け、ニューヨークの祖母に電話するが、祖母は何も話さず電話を切ってしまう。

一方、夫ヤンキーと彼のいとこであるモイシェは、エスティを取り戻そうとドイツのベルリンに飛ぶ。

ホテルのフロントで「イスラエルんのお客様は大歓迎です。シャローム」と言われたモイシェは、「イスラエル? シオン主義者め!俺たちはニューヨークからだ!」と答える。

そして「俺に荷物は?」と聞いて受け取った箱の中身は、拳銃だった。

ヤンキーとモイシェはエスティの母親リアの住居に行き、「エスティがいるだろ?」と、リアを問い詰める。

リアの同居の女性は警察に電話をと言うが、リアは「いいえ、ここはドイツよ。それに彼女は行方不明じゃない。19歳だもの、ここに来るまで待つわ」と答える。

また、こう付け加える。

「追えば逃げるのにね」

[回想]結婚式/ニューヨーク


結婚式。男たちが歌いながら新郎のヤンキーを花嫁のエスティのところまで連れてきて、ヤンキーがエスティにヴェールをかける。

ラビが「モーセとイスラエルの法に基づき婚姻の証に指輪を」と述べ、ヤンキーがエスティの指に指輪をはめる。

部屋の端からエスティの母リアがそっと見守っている。

[音楽院]ベルリン

「カツラを取っても、可愛かった」

「オーソドックス(正統派)よ」とヤエルが言う。

「何の?」

「ユダヤの」

「そんな宗派が?」

「過激でイカれた人たちよ。男はユダヤの法だけ学び、女は出産マシーン」とヤエル。

「出産マシーンじゃない」とエスティが反論したところで教授が入って来る。

「エステルはニューヨーク出身のピアニストで、特別プログラムを申し込んだ。今日は一緒に参加してもらう。君たちの観客だ」

夕食会に誘われたエスティは、ヤエルから「逃げて来たの?」と聞かれ、「私が囚われの身だと?」と聞き返す。

「違うの?」

「違うわ。誰にも言わずに出て来たけどね」

「どうして?」

「何でも聞くなよ」

「いいのよ。神から私への期待が大き過ぎたの。自分の道を探さなきゃ」

「君の人生に乾杯だ」

[回想]結婚式/ニューヨーク

「聖なるラビが、ミツバーの踊りを新婦の前で披露します。彼の祖先の功徳が新郎新婦に祝福を。そして全員で踊るのです。高潔なメシアに向けて全員で踊りましょう」

そう言うラビと新郎新婦は黒いヒモで繋がっている。

踊る男たち。中には泥酔して倒れる者も。

「新郎は今から敬虔な妻と踊ります。聖なる神と結合するために新婦の前でどう踊るのか?2人が築く家庭は永遠に続くものとなる。高潔なメシアに向けて皆で踊りましょう」

[夕食会]ベルリン

「エスティ、なぜベルリンに?ニューヨークの音楽学校は世界一だろ?」

「コミュニティから出来るだけ離れたくて」

「なぜ?」

「合わなかったの」

「分かるよ。ナイジェリアでのゲイはつらい」

「みんなすごい。奨学金を受けたい」とエスティ。

するとヤエルが、「演奏を聞かせて。いい練習になるわよ。私たちもそうしてる」とエスティに言う。

エスティは皆の前で演奏するが、大したことはない。

ダージアは「良かったわ」と言うが、ヤエルは、

「やめなよ、彼女のためにも。良かったわ、それは本当。ユダヤのミツバー(成人式)の演奏ならね。でも音楽院には絶対に入れない」

「そんなこと言う必要がある?」とダージア。

「私は正直に言っただけ。ピアニストとは言えない。ここにいる全員が幼い頃から自分の楽器を毎日練習して来た。絶対音感のある人や、生まれつき美声の歌手もいる。でもブルックリンで数回レッスン受けても交響楽団はムリ。違う環境だったら、可能性はあったかもしれない。でももう遅い。ピアニストにはなれない」

それを聞いたエスティは、トイレに行くふりをして外へ出て行く。

公衆電話からエスティは、祖母に電話する。

「バビー、エスティよ。すごく遠くにいるの。会いたいわ。私、どうすれば…」

しかし、バビーは何も喋らず切ってしまう。

Episode-3

[回想]初夜/ニューヨーク

ヤンキーはエスティの上に乗って入れようとするが入らない。

ヤンキーの母親が来て、エスティに言う。

「昨夜も失敗したそうね」

「そんな話まで?」

「当然よ、母親だもの」

「まだ1週間です」

「何度試したの?」

「はっきりとは…」

「そう。良いものを持って来たわ。使い方は箱に…。入りやすくなるわ。あの子が自信を失う前に何とかして。いい?」

「でも…」

「ヤンキーは繊細なのよ。自信を持たせて…」

「王のように。はい、男はベッドでは王」

「いつでも王だと思わせてあげて」

「つまり、私は女王?」

義母は苦笑いして、そして出て行く直前、「がっかりさせないでね」

[音楽院]ベルリン

自信を失ったエスティは申請を取り消すため事務局に行く。

オーディションはいつかと聞かれ、知らないと答えるエスティ。

「郵送したはずよ」

エスティは住所を母親の住居としたので、その頃ちょうど母リアが通知を受け取っていた。

申請を受け付けた女性は、誰でも不安になるものだとエスティを宥め、言った。

「ここの教授は有名な音楽家ばかりよ。時間を割いてくれるのに、失礼なマネはしないでね」

[墓地]ベルリン

ベルリンの墓地にやって来たヤンキーとモイシェ。

「戦争中、ユダヤ人はここに隠れていた、シュワルツという歌手の墓に。エスティの旧姓だ。トーラーや祭具もそこに隠した」とモイシェ。

「エスティを捜してどうする?戻ると思うか?」

「みんな戻る。俺を見ろ」

「君を?ラビの墓さえ見つけられない」

「必ず見つけて導きを求め、祈るさ」

「どっちだ?」

「まあ待て。ヨーロッパ最大のユダヤ人墓地だぞ。10万基以上の墓がある。どうしろと?」

「エスティの母親に早く真実を確かめたい」

「この辺りのはず…。見つけたぞ」

そこは「サミュエル・ベン・ラファエル」の墓だった。

2人は祈りを捧げる。

[図書館]ベルリン

シャルハルム音楽院のホームページを図書館のパソコンで見るエスティ。

そこで友人のサリムに会う。

「どうしてここに?」

「バイトしてるんだ。昨夜ロバートが追いかけたのに。ヤエルのせいだろ?悪気はないんだ」

「どうかしら。でも、事実」

「何か手伝えることは?」

検索の方法が分からないと言うエスティに、サリムが検索方法を教える。

すると、エスティは「神はいる?」と検索する。

「壮大な疑問だ」

「答えが多すぎる」

「最終的には正しい答えは自分で選ぶ。ロバートかダージアに連絡を。心配してるから」

エスティは次に「ベルリンで稼ぐ方法」を検索。

「動画を配信」とか「インスタでバズる」とかの検索結果しかないので、次は「早く稼ぐ方法」と検索。

すると「自宅で週に5000ユーロ稼ぐ」などといういかがわしい画面に。

[娼館]ベルリン

モイシェはヤンキーを知り合いの経営する娼館に連れてくる。

ヤンキーが、いとこのモイシェに連れて行かれた先は娼館だった。

部屋に連れて行かれ、服を脱ぐよう言われたヤンキーだが、脱がない。

「妻以外の女には触れない。僕には女が分からない。もし君に触って良いとしたら、どうすれば良い?」

「あなたの望みどおりに」

「そうじゃない。君だったら何をして欲しい?どうしたら…快感を?」

「まず顔を触ったら、次に髪を撫でる。それからゆっくり下に下りて行って、オッパイを…」

[街の通り]ベルリン

エスティが街頭のポールに貼られた求人を見て歩いている。

次に教会へ行くと、メンデルスゾーンの「山を見上げよ」が聴こえて来て、歌声のするほうに歩む。

エステルはその歌を聴いて涙ぐむ。

[エスティの母の勤め先]ベルリン

ヤンキーがエスティの母リアを勤め先に訪ねて来る。

「何しに来たの?仕事中よ、出てって」

職場でイディッシュ語を使うリアに、

「今でもイディッシュ語を?」とヤンキーが尋ねる。

「職場ではね」

「なぜ?」

「仕方ないわ。教養も技術もないのよ。苦手だったイディッシュ語もここでなら役に立つ。現実は厳しいわ」

「ウィリアムズバーグにいれば苦労しなかったのに」

「どうかしら。酒浸りの夫から誰も救い出してくれなかった」

「たくさんあるわ。でも神が自由をくれた」

「神が?」

「私には神がいないと?散々傷つけられたわ。戒律や噂話に。エスティも逃げるはずだわ」

[回想]祖母の家/ニューヨーク

エスティを訪ねて来たおばのマルカに、エスティは家に帰りたいと言うがマルカは認めない。

「あなたの家はここよ。まだ数ヶ月よ。世間体がわるい」

「しばらく帰らせて」

「性生活のこと?」

「うまくできないの。努力はしてるけど、痛くて。異教徒の夫婦はYouTubeを参考に…」

「ユダヤ人はYouTubeを見ない。それでも異教徒より子だくさんよ」

帰りたいと言うエスティに、マルカは、帰らせないと言う。

ヤンキーの母の「シャピロ夫人が欠陥品だと触れ回るでしょ。バビーたちをこれ以上悲しませないで。もう高齢だし身体も弱ってるんだから。子どもを作らないと家での立場は弱いままよ。真剣にやって」

「分かった。ピアノも止める」

「まだ異教徒のレッスンを?」

「もう行かない」

「それでいい。妻なんだから」

涙をためるエスティ。

[回想]エスティの家/ニューヨーク

エスティの家に、女性が派遣されて来る。

「男の人はこの部分で大きな快楽を感じるの。夫の身体を満足させれば欲しいものが手に入るわ」

「赤ん坊?」

「そのとおり」

その女性は、「不安を計測する機械」を出して、電極をエスティの指につけ、計測し、こう言った。

「あなたの心と体が一致していないの。膣痙という症状よ」

エステいは寝室で治療を受けることに。

「目を閉じて、バラの香りを想像しながら4秒かけて鼻から息を吸って。次に7秒かけて口から息を吐いて」

「これだけ?」

「毎晩ベッドに入る前に。それから呼吸法と同時にこれで訓練して」

と彼女は、「膣拡張機」なるものをエスティに渡し、「すぐに妊娠できるわ」と言った。

[介護施設]ベルリン

「エスティは家にはいないわ」

とリアはヤンキーに言う。

「隠しているのでは?」

「違うわ。仕事の邪魔をしないで」

「モイシェが…」

「彼はクズよ」

「分かったら連絡を」とヤンキーは電話番号を書いたメモを渡すが、リアは「ええ」と返事したものの、彼が出て行くと、それを丸めてゴミ箱に捨てた。

[リアの住居]

モイシェはリアの留守に、リアの住まいに侵入していた。

ヤンキーは、部屋の中でエスティの手がかりを捜し、エスティのオーディションの通知を見つけた。

[音楽院]ベルリン

エスティが音楽院に行くと、ロバートが寄って来た。

「昨夜は心配したよ」

「力を貸して欲しいの。木曜日にオーディションが」

「受けるの?」

「どうしても奨学金をもらいたいの。故郷には帰れない」

[回想]エスティの家/ニューヨーク

「生理は終わったろ?ミクヴェには?」とヤンキーがエスティに言う。

「行ったわ」

「じゃあ来いよ」

「出来ない。なぜ…」

「訓練はしているか?」

「もちろんよ。当然でしょ。分かる?どんなに痛いか。本物でも快楽は得られない」

「快楽?エスティ、結婚してもうすぐ1年だ。生殖はトーラーにも書かれた義務だ。快楽を得るための行為ではない」

「痛みに耐えられない私が身勝手だと?性行為に伴う快楽はタルムードでも認めているわ。それに夫には妻の性的な欲望を満たす義務がある」

「女がタルムードを読むな。訓練がつらいのは分かる。君を苦しめたくはない」

「本当に?」

「だったらお義母さんに、いちいち詮索させないで。『まだセックスしてないの?』『何か欠陥あるんじゃないの』『いっそ体外受精したら?』。頭の中から声が聞こえるのよ。うまく行くわけないわ。いつも見張られているみたい」

「母さんの善意だよ」

「いいわ」と言ってエスティはベッドに横になり、ヤンキーはエスティの上に。

痛がるエスティだったが、「そのまま続けて」。

「いい?」

「もっと強く。やめないで」

やり遂げて離れたヤンキーは言う。

「こんなの初めてだ、すごいよ」

[音楽院]ベルリン

音楽院で楽譜のコピーをとっていると、ダージアが来て、「元気?」とエスティに話しかけて来た。

「今夜、ヤエルがクラブで演奏するんだけど来る?」

「今?」

2人はクラブへ向かうが、外で見張っていたモイシェが後をつけて来る。

「最高だろ?」と友人から聞かれたエスティは、「どうかな。故郷では毒だと教わった」

音楽に合わせ大勢が踊る中、戸惑うエスティだったが、次第に慣れて来て、体を揺らし始める。

モイシェはロバートと踊るエスティをモイシェは見つけ、スマホのカメラで撮影するが、その後2人を見失ってしまう。

Episode-4

[ユダヤ教教会]ニューヨーク

ラビが「4つの質問の時間だ」と言うと、子どもたちが、「親愛なる指導者様、4つの質問があります。どうか質問にお答えください」と言う。

するとラビが答える。

「お前の質問に答えてやろう。我々はエジプトでファラオ(王)の奴隷だった。主が我々を救い出した。祖先がエジプトから救い出されなければ我々や子ども、孫たちは奴隷のままだったはずだ。エジプトのファラオに従う奴隷だ。過越の祭りを行うのは、苦しみを忘れないためだ。エジプト以外でも我々は虐げられて来た。フメリニッキーの乱や、ポグラム、ナチスもだ。だが忘れられ、どの時代でも脅威は立ちはだかる。友人や隣人を信じた我々に対し神は罰を与えたのだ。彼らと同じ服装で彼らの言語を話したからだ。自分たちが何者かを忘れると、神の怒りを招くことになるのだ。だから我々は、この場に座っている。自分が何者なのか受け入れるのだ。それこそが自由でいるための唯一の方法なのだ」

[回想]エスティの家/ニューヨーク

ある夜、トイレで妊娠検査キットを使い、陽性だと判明し泣くエスティ。

家で夫に告げようとしたがその前に、夫から「離婚したい」と言われてしまう。

「母親から、いい妻じゃないと言われた」

「でも…」

「成功したのは一度だけ。いつも痛がるじゃないか。君の問題だろ?僕も再婚できる若さだし。他に方法が?」

「私に聞くの?」と涙するエスティは、ふと思う。

「もう別の縁談が?そうなの?」

と怒ってテーブルを叩く。

「落ち着いて」と宥めるヤンキーに、「もういい!」と席を立って、エスティは部屋を出て行く。

[ホテル]ベルリン

「エスティがいた。あの女は異常だ。なぜ信じる?」とモイシェがヤンキーに言う。

「君こそ信じられない」

するとモイシェがヤンキーにクラブで撮ったエスティの写真を見せる。

オーディションの通知を撮った写真も見せた。

[リアの住居]ベルリン

「よくもウソを!いるんだろ?」

ヤンキーがリアの家に押しかけ、リアに詰め寄る。

「いないわよ」

「じゃあ、どこだ。オーディションの通知か。妻はどこだ?」

「やめて!」

ヤンキーは泣いて謝る。

ベランダに出たヤンキーは、リアに言う。

「妻に離婚を頼んだ」

「なぜ?」

「彼女は妊娠できないと思って。でも、した」

「エスティが妊娠を?だから追って来たのね。いとこはラビの差し金かしら」

ラビの手口を知っているリアが言った。

「連れ戻さなきゃ。僕の子だ。どうしろと?」

「エスティの意志を聞いて」

[デパートの化粧品売り場と公園]ベルリン

デパートの化粧品売り場で口紅を探すエスティ。

道路からはモイシェが見張っている。

それに気づいたエスティが逃げると、モイシェが追って来る。

モイシェは通りの人気のないところでエスティを車に押し込む。

「神が見てる」というエスティに、モイシェは、

「俺を? お前もだ。神はお前をどう思う?」

公園に降ろされたエスティにモイシェが言う。

「座れ。パン屋のアウエルバッハ氏を?」

「知ってるわ」

「ここの出身だ」

「この公園で生まれたの?」

「大まかには。戦争で破壊されたが、彼はここで生まれた。1932年にな。ロッテルダム行きの最終列車に乗り、その後ニューヨークへ渡った。他のユダヤ人たちは、あの道で捕らえられ、収容所で殺された。両親とは再会できなかった」

「ひどい話だけど、今の彼には13人の子と、30人の孫がいるわ。お店も繁盛している」

「ここから逃げたからさ。ここにはユダヤ人の魂が集う。何百万もの魂がな。こんな場所で子育てを?」

「魂は常に共にある。どこに住んでもね。祖母は死んだ身内の魂と共に食事をしないとでも?」

「まさか。だが、食事を共にする魂が増える。お前のさ。どうする気だ?技術やカネ、経験も、人間関係もない。恐ろしい世界だ。今はまだカネがある。飢えて苦しんでもいないが、持って数ヶ月、限界だと思ったら俺に言え。誰にも心配されなくなったらな」

「母がいるわ」

「お前を捨てて老人のケツを拭いている女か?異教徒の女と住んでいるのに、お前を歓迎するとでも?あり得ない。自業自得さ。お前は独りだ。結局は故郷に戻ろうとするが、その時には遅い。何もかもな」

「それは何?」

モイシェが持っているものをエスティが聞くと、モイシェは、

「今戻らないと神の最後の審判を待つ迷い人になってしまう。だが他にも道が…」と言って、銃を出した。

「モイシェ、しまって」

「バカな女だ。俺は撃たない。戻らないなら自分でやれ」

と、モイシェは銃を置いて行き、エスティは呆然とする。

[回想]ピアノ教室/ニューヨーク

ウィリアムズバーグのピアノ教室で、エスティはピアノ教師に妊娠を打ち明けた。

「望んでいたでしょ?」

「こんな形じゃない」

「ここはアメリカよ。自分で決断を…」

「ウィリアムズバーグは違う。戒律がある」

「戒律なんて空想よ。エルブに電気は通っていない。ワニだらけの堀だってここには存在しない。そう信じているだけ」

「タルムードにあるの。『自分がなさなきゃ誰が?』『今じゃなきゃ、いつ?』って」

エスティは書類を教師に見せる。

「母がくれた書類よ。ドイツ国籍が取れるの。だから力を貸して」

真珠のネックレス、ダイヤと真珠のイヤリングなどを売って旅費を工面し、エスティはドイツに渡ったのだ。

[リアのアパート]ベルリン

エスティは母リアの家に行く。

招き入れられたエスティは、モイシェから渡された銃を出す。

「それを渡して。心配ない。大丈夫よ」と、不安で一杯のエスティに、リアが言う。

「追って来たの。連れ戻す気よ」

「モイシェ?彼が追って来て銃を?」

「知ってるの?」

「常套手段よ。外では生きられないと信じさせようとする」

「彼は正しいわ。妊娠してるの。おカネも教養もなく、何も子どもに与えられない」

「母親は愛情を与えられる」

「あなたのように?母親業なんて分からない」

「力になる」

「やめて」

「約束する」

「やめてったら」

「やめないわ。こも15年間で初めて監視なしで話せる。マルカもバビーもいない。愛するあなたの力にある。聞いて。あなたを愛している。あなたを助ける」

「私を捨てた」

「違う」

「3歳で捨ててマルカとバビーが」

「取り上げられたの」

「ウソよ」

「ウソじゃない。聞いて。私は17歳で外国の男性に嫁いだ。誰も助けてくれなかった。本当に…、大変だったの。あなたを授かり、友人が私たちのためにアパートを」

「私たち?」

「私とあなたよ。その数ヶ月は本当に幸せだった。ラビが男を使い、夜中の電話や訪問で私を脅すまではね。弁護士も出て来て、勝てなかった」

エスティの目からはは涙がポロポロとこぼれ落ちた。

「裁判で負けたの。毎日あなたを思っていたのよ」

[音楽院]オーディション

母親に着せてもらったワンピース姿でオーディションの舞台に上がったエスティが、挨拶する。

「チャンスをいただき、ありがとうございます。ニューヨークから来たシャピロです」

「演目は?」

「歌です」

「直前の変更は異例ね」と女性教授。

「分かってます。認められなければ結構です」

会場の外には、ドア越しに耳をそば立てる母リアの姿があった。

「何を歌うんだ?」

「『音楽に寄せて』。シューベルトです」

伴奏は事前にロバートの伝手で依頼してあった。


あなたは素晴らしい芸術
私は闇に囚われていた
ずっと恐ろしい闇の中で
不幸な人生を送っていた

と歌う。

会場のホールにモイシェもやって来たが、リアが「あの子の邪魔をしないで。私だって脅せるのよ。出て行って」と銃を突きつける。

歌い終わったエスティに、教授が選曲の理由を聞く。

「祖母が好きな歌です。2人の秘密でした」

「なぜ秘密?」

「私のコミュニティでは、公共の場での女性の歌唱は禁じられているのです」

「どうして?」

「男性の前で大声を出すのは、下品だという考えです。誘惑だとも」

「学歴を教えてくれ」

「17歳まで通学しました」

「正式な音楽の訓練はなかった?」

「音楽だけでなく、何もありませんでした。ですがこの3年は、祖父の物件を借りていた方のピアノレッスンを。家賃の代わりです。これも秘密でした。正確には夫は知っていましたが、反対していました」

「何歳?」

「19歳です」

「この曲はソプラノ向きよ。あなたはメゾソプラノだわ。他の曲のほうが良かったのでは?」と女性教授。

「はい、では…」

とエスティは、アカペラでユダヤの曲をイディッシュ語で熱唱。

会場で聞いていた人を感動させる。

オーディションを終えると、母も、「最高だった。あんな上手だなんて」とエスティを讃えた。

エスティは友人たちに母親を紹介する。

ヤンキーにも気づいたエスティは、「いつ来たの?」

「歌い始めた時だ。君の髪みんな見てる」

「ここではオシャレだって」

「なるほど、違うトーラーか。あんな風に歌えるとは知らなかった」

「知らないことばかりでしょ。私自身だってそうよ」

「一緒に見つけよう」

ヤンキーはエスティをホテルの部屋に誘う。

しかし、エスティは断る。

「見せたいものが」

「モイシェの入れ知恵?」

「モイシェ?違う」

ヤンキーは小さな箱をエスティに渡す。

「開けてくれ、頼む」

音符のネックレスだった。

「素敵ね。ありがとう」

「聞いてくれ。妊娠したんだろ?奇跡だよ」

「そうね」

「一緒に帰ろう。家族を作るんだ。望んでたろ?」

「そう?」

「今日君が歌った時、結婚式を思い出したよ。幸せだった」

「私もよ。結婚は新たな人生の始まりだと思ったから。でも…」

「また始めよう」

「あなたは離婚だと言った」

「人生の最大の過ちだった」

「それに…」

「子どもがいれば、変わるさ」

「簡単には…」

「分かってる。君がいつも不幸なのを君のせいにして来た。だが君は何も悪くなかった。違っただけざ、君が言ってたようにね。だから…」

エスティは首を横に振り、

「戻れないわ」

「大丈夫、戻れるさ。僕も変わるよ」と言ったかと思うと、ヤンキーは自分の三つ編みを切ろうとする。

「やめて!ヤンキーダメよ」

ヤンキーは、三つ編みを切って言う。

「どうだ、一緒に来てくれる?」

「もう遅いわ。分からない?もう遅いの」

と言ってエスティは部屋を出て行った。

エスティがホテルの入り口に降りて行くと、モイシェが「エステル・シャピロ!」と叫んだ。

「俺と一緒に来るか?俺らはまた来るぜ」

エスティが、酔っているモイシェを振り払うと、モイシェは笑いながらよろけた。

[カフェ]ベルリン

エスティは、封筒の中を見る。

少しのおカネと方位磁石が入っている。

磁石を取り出して見ていると、友人たちがやって来るのが見える。

エスティは、彼らに手を振った。

『アンオーソドックス』予告篇

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『アンオーソドックス』解説

『アンオーソドックス(Unorthodox)』は、2020年3月26日にNetflixで配信が始まったドイツ系アメリカ人のドラマで、イディッシュ(Yiddish)語初のNetflixシリーズだ。

超正統派コミュニティの部分は、ニューヨーク市のハシディック・コミュニティであるサトマール運動を去ったデボラ・フェルドマンによる回想録『Unorthodox: The Scandalous Rejection of My Hasidic Roots (English Edition)』(2012)に基づいている。

ドラマの中での言語は、英語からイディッシュ語、ドイツへと切り替わる。

音楽院は、バレンボイム音楽アカデミー(Barenboim-SaidAkademie)を参考にしている。

脚本のアンナ・ウィンガーは「ガーディアン」に次のように語っている。

「バレンボイムと呼ばれる本物の音楽アカデミーがあります。ユダヤ人とイスラム教徒がまるでユートピアのように古典的な音楽を一緒に演奏するアカデミーです。ベルリンでしか始められないような機関で、この考え方に触発されました」

原作の著者フェルドマンは、脚本のウィンガーとカロリンスキーに、彼女の自伝をテレビシリーズ化するよう働きかけた。

彼らにはドイツ系ユダヤ人であるという共通点があり、プロジェクトを引き受けた。

フェルドマンは実在の人物であるが、脚本は架空のベルリンの舞台で彼女の人生から離れたが、回想シーンは彼女の著書に基づいている。

制作チームは、ウィリアムズバーグのブルックリン地区に2回の調査旅行を行い、建物を見学し、物語の一部が設定されているサトマール・ユダヤ人のコミュニティの人々と会った。

ドイツでキャストされたジェフ・ウィルブッシュ(モイシェ役)は、サトマール・コミュニティ(エルサレムのミーシアリム地区)のネイティブ・イディッシュスピーカーであるという点で、4人の主演俳優たちの中でユニークな存在だ。

撮影はニューヨークで始まり、その後ベルリンに移った。そこでプロダクションデザイナーはブルックリンのエクステリアと同期するCCCFilmstudios でインテリアセットを作った。

ベルリンの撮影では、音楽院とその周辺のセットとして機能したポツダム広場や、ナチスによって「ユダヤ人問題の最終的解決」が計画された湖畔の別荘があるヴァン湖でロケが行われた。

結婚式の2日間の撮影は複雑な作業であり、文化的祝賀を正確に描写する必要があるため、約100人のエキストラが用意された。男性が女性よりもはるかに多くのヘアメイクを必要としたという。

コスチュームデザイナーのジャスティン・シーモアはウィリアムズバーグで服の一部を手に入れたが、高価な毛皮の帽子「シュトライメル」は手に入らなかったため、ミンクの代わりにニセの毛皮を使ってハンブルクの劇団によって作られた。

『アンオーソドックス』の感想

女は10代のうちに結婚せねばならず、結婚したら髪を丸刈りにされ、早く妊娠しなければならず、夫とのSEXに姑が口を挟む。

筆者は女ではないが、こんなことは想像しただけでもつらい。

日本でも髪やSEXは別として戦前は似た傾向があったかもしれないが、このドラマの主人公が生きているのは現在だ。

彼女が暮らすのはニューヨークだが、ユダヤ教超正統派(ウルトラオーソドックス)という厳格な教えが支配するコミュニティだ。

冒頭の記述も、オーソドックスの教えに沿ったものなのだ。

嫁姑の戦いは時と所を超えた普遍的なものかもしれないが、夫婦のSEXにまで踏み込んで来るのは、稀ではなかろうか(あるかもしれないが)。

膣拡張機なるものまで手配される主人公エスティの気持ちを考えると堪らない。

しかも、1年妊娠しないからと言って、母親の意向で息子である夫から離婚を申し渡されるエスティの気持ちはいかほどか。

ちょうど妊娠が判った直後だったにもかかわらず、そのことを告げず黙ってコミュニティを脱け出す彼女の気持ちはよく分かる。

エスティの母リアはイギリス出身ながら17歳でオーソドックス信徒の男と結婚した。

つまりそれがエスティの父だが、飲んだくれの放蕩息子であったため、リアは離婚する。

コミュニティを脱け出したエスティは、母リアが暮らすベルリンの母親の許へ向かうが、母が女性と同居しているのを見て、母に告げず黙って去る。

エスティは、ベルリンの音楽院で知り合った学生たちとヴァン湖に行くことになる。

そこはかつてナチスが、ユダヤ人問題の最終的解決と呼ばれるホロコーストを決定した地であった。

その湖に入った時、エスティは、ウィッグ(カツラ)を外す。

女が人前で丸刈り頭を見せるのは恥ずかしいことで、タブーだ。

エスティはここでオーソドックスのタブーを破ったわけで、これは彼女がユダヤの教えに逆らい自由を手に入れ始める象徴的シーンだ。

ジーンズも然り。口紅も然り。ロバートとの関係にしても、エスティはその後も次々とタブーを破って解放されていく。

エスティは、ピアノで音楽院のオーディションを受けようとするが、ピアノもタブーのため、彼女はニューヨーク時代も3年間、内緒でピアノを習っていた。

3年ピアノを習ったくらいでは音楽院に受かるはずもなく、友人からその甘さを指摘されたエスティはオーディション当日、ピアノから歌に変更する。

実力がまったく分からないのにオーディションを受けられるのも日本ではあり得ないことだと思うが、ステージに上がってから審査種目を変更するなんて、ちょっと信じられない。

日本が硬すぎるのか、あちらが柔軟なのか。

歌も最初は、シューベルトの『音楽に寄せて』を歌うが、「今の歌はソプラノ向きだが、あなたの声はメゾソプラノだ」と言われ、ではとユダヤの歌を歌う。

これも随分と柔軟だなと思うが、この歌が心を打つ。

会場で聞いていた人々の目には涙が滲む。

夫ヤンキーも駆けつけ、エスティの歌を聴いていて、オーディション終了後、エスティと対面し、今までのことを侘びる。

自分も変わるからやり直そうとヤンキーは関係修復をエスティに懇願する。

だが、夫ヤンキーが詫びても、殻を抜け出し、自由を知ってしまったエスティにとっては、「もう遅い」。

元の生活に戻ることはできないのだ。

ヤンキーがちょっと可哀想な感じもするが、気付くのが遅すぎたのだから仕方ない。

それにしてもドラマのタイトルが洒落ているというか深い。

英語のオーソドックスは正統派という意味であり、超正統派はウルトラオーソドックスの訳だが、アンを頭に付けると否定形になり、非正統派ということになる。

エスティは自由を得るためにユダヤ教のオーソドックス派を否定するのであり、つまりアンオーソドックス(非正統派)とはエスティのことである。

ではエスティは一般的にアンオーソドックスかというとそんなことはない。

『アンオーソドックス』をより深く理解するためのユダヤ教の基礎知識

タルムード 2世紀頃からユダヤ人の間で幾たびも議論の末に改良を重ねられてきた生活および思想の基礎でありユダヤ教の聖典。タルムードは(ヘブライ語で研究の意で、モーセが伝えたもう一つの律法とされる「口伝律法」を収めた6部構成、63編の文書群。

トーラー ユダヤ教の聖書(タナハ)における最初の「モーセ五書」のこと(成文トーラー)。また、それに関する注釈を加えてユダヤ教の教え全体を指す場合もある。

ミクラー キリスト教の『旧約聖書』に相当するもの。

ミツバ(ミツワー) 13歳に達するとバル・ミツワー(成人式)の儀式が行われ完全に大人と同様と扱われる。

安息日 安息日と呼ばれる休日を週1回は必ず取り、安息日の間は労働はしてはならない決まり。自分自身を見つめ、自分や家族と対話して過ごす。

ハシディック ウルトラオーソドックスとも呼ばれる、超正統派ユダヤ人。彼らは長いもみあげ、三つ編み、黒い帽子、黒い服の装いをぢている。

ミクヴェ(ミクワー、ミクウェ) 水槽などの水に頭まで浸かり心身を清め祈る宗教的な行為。ドラマの中ではエスティが「妻になる方法」として毎週金曜日にセックスし、生理が終わったら1日2回検査し、7日間汚れなけれなミクヴェの後に夫とセックスして良いと教わる。

シュトライメル 安息日や儀式の際に男が身につける円筒形の帽子。

超正統派(ハシディック、ウルトラオーソドックス) このドラマで描かれたニューヨークのウィリアムズバーグもそうだが、ユダヤ教の中でも最も厳格な教えに忠実に生きているのが超正統派(Hasidic)と呼ばれる人たち。
ニューヨークのコミュニティには超正統派の中でもサトマール派というハンガリーの町シャトマールを起源にもつ宗派に属する57万人が暮らすが、彼らには多くの決まりやタブーがある。
たとえば食べ物はコーシャといって教えで認められたもの以外は食べてはいけない。
服装も男は黒い帽子、黒いコート、黒いズボンと黒尽くめ。三つ編みの髪も特徴的だ。
女は襟の詰まったシャツとロングスカートないしはワンピース。10代で結婚しなければならず、結婚した女の髪は丸刈りにされ、スカーフかカツラをかぶる。
「産めよ、増えよ」という聖典の言葉にに従い、超正統派の家庭は子だくさんだ。
男女別学で、未婚の男女は一緒に歩いてもいけないし、女性の生理は不浄とされ、生理中、夫は妻に触れてはならない。
LGBTQ、避妊、中絶は認められない。
インターネットの使用も禁じられているから主人公のエスティも、ドイツの図書館で初めてインターネットをやる。
何をするにもラビに従わねばならず、逆らってコミュニティを離脱したら親子と言えども絶交となる。
また、彼らはシオニズムに反対している。ドラマではモイシェがベルリンのホテルでイスラエル人と間違わられ、「シオニストめ!」と悪態を突く場面がある。つまり、彼らはイスラエル建国に反対で、パレスチナの人々を追い出すような形で成立したイスラエル建国を間違いだと考えている。
また、ユダヤ人がヨーロッパで世俗化したことに対する神からの「天罰」としてホロコーストが起きたと考える。

ハシディックとは、18世紀後半に東ヨーロッパから始まった敬けんな運動から生じた正統派ユダヤ教徒の教派「ハシディズム(ユダヤ教敬けん主義)」を信じる人々のことで英語ではウルトラオーソドックス(超正統派)と呼ばれる。

『アンオーソドックス』への批評家の評価

『アンオーソドックス/Unorthodox』は、広く批評家の称賛を受けた。レビュー集約ウェブサイト「ロッテントマト」(RottenTomatoes)は、41件のレビューに基づいて95%の承認率を報告。平均評価は8.09 / 10だ。

『アンオーソドックス』のドキュメンタリー

Netflixは、このドラマの創造的なプロセスと、撮影を記録した20分間のドキュメンタリー『メイキング・アンオーソドックス(Making Unorthodox)』をリリースし、本とテレビ番組の違いについて説明した。

『アンオーソドックス』データ

題名 『アンオーソドックス』 原題 「Unorthodox」
 アメリカ、ドイツ
言語 イディッシュ語、英語、ドイツ語
公開日 2020年3月26日
時間 52-54分
チャンネル Netflix

『アンオーソドックス』受賞歴

受賞:第72回(2020年)プライムタイム・エミー賞リミテッドシリーズ部門の監督賞(マリア・シュレーダー)

ノミネート:主演女優賞(シラ・ハース)、脚本賞(アンナ・ウィンガー)、作品賞などのプライムタイム・エミー賞にノミネート

『アンオーソドックス』キャスト

エステル(エスティ)・シャピロ(Esther “Esty” Shapiro)役 シーラ・ハース(Shira Haas)1995年5月11日イスラエル生まれ。『Broken Mirrors 』(2018)、『Princess』 (2014) 、『Pere Atzil 』(2018)で知られる女優。

ヤコブ(ヤンキー)・シャピロ(Yakov “Yanky” Shapiro)役 アミット・ラハヴ(Amit Rahav)『Dig 』(2015)、『Mekulalim』 (2018) 、『Mishpaha Sholetet』 (2014)で知られる俳優。

モイシェ・レフコヴィッチ(Moishe Lefkovitch)役 ジェフ・ウィルヴィッシュ(JeffWilbusch)

ジェフ・ウィルブッシュはイスラエルとドイツの俳優です。ウィルブッシュは1987年11月14日にイスラエルのハイファで生まれました。 彼はエルサレムのMeaShearimのHasidicJewishSatmarコミュニティで育ちました。 彼は14人の兄弟の長男です。13歳のとき、彼はコミュニティを離れ、教育を終えるためにアムステルダムに移りました。 彼は経済学を学び、2011年にアムステルダム大学から国際経済学の修士号を取得しました。 大学院の学位を取得した後、彼はミュンヘンに移り、2015年までオットーファルケンバーグ舞台芸術学校で演劇を学びました。2018年、彼はBBCでAntonMesterbeinの役割を果たしました-AMCミニシリーズTheLittle Drummer Girl、およびドイツ-ルクセンブルグのテレビシリーズBadBanksでNoahWeisz。 2020年に、彼はドイツ系アメリカ人のNetflixオリジナルミニシリーズUnorthodoxでMoisheLefkovitchを描写しました。英語、ドイツ語、オランダ語、ヘブライ語、イディッシュ語に堪能。アフリカの言葉、アラビア語、Flemish、ロシア語、スペイン語も話す。

リア・マンデルバウム(Leah Mandelbaum Schwartz)役 アレック・スリード(Alex Reid) 『Misfits/ミスフィッツ-俺たちエスパー! 』(2009) 、『ディセント』 (2005)で知られる英国の女優

バビー(Babby) 役 ディナ・ドロン(Dina Doron)1940年イスラエル生まれの女優。『エージェント・ゾーハン 』(2008)、『 Moses the Lawgiver』 (1974) 、『The New Media Bible: Book of Genesis』 (1979)に出演。

ロバート(Robert)役 アーロン・アルタラス(Aaron Altaras) 1995年11月21日ベルリンで生まれの俳優。監督兼女優のアドリアーナ・アルタラスと作曲家のヴォルフガング・ベーマーの息子。 9歳の時にテレビの『モーゲルパックンマン』で最初の主要な役を演じた。それ以来、彼はテレビや映画に数多く出演。『 Wenn der Vater mit dem Sohne』(2004)、『Allein unter Bauern』(2006)、『Hoellenritt』(2007)。『Nicht alle waren Moerder』(2006)では、生き残ったユダヤ人の少年、MichaelDegen役で有名俳優に。この映画はドイツで最も権威のあるテレビ賞の1つであるグリム・プライスを受賞。 サッカー好き。

マルカ・シュワルツ(Malka Schwartz)エスティのおば・役 ロニット・アシェリ(Ronit Asheri)『Revivre』(2009)で知られる女優。

ダシア(Dasia)役 サフィナツ・サタール(Safinaz Sattar) 『Sløborn』 (2020)、『タートオルト』 (1970) 、『 Paradiesvogel 』(2020)で知られる女優。

Photos:IMDb

『アンオーソドックス』クリエイター

原作 『Unorthodox』デボラ・フェルドマン(Deborah Feldman)著

脚本 アンナ・ウィンガー(Anna Winger)アレクサ・カロリンスキー( Alexa Karolinski)ダニエル・ヘンドラー(Daniel Hendler)
監督 マリア・シュレイダー(Maria Schrader)
製作国 米国、ドイツ
言語 英語、イディッシュ語、ドイツ語
配信 Netflix
リリース日 2020年3月26日

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