『はじまりへの旅』あらすじ,ネタバレ,感想[心に残る映画]

はてなちゃん

心に残る映画を観たいのですが、おすすめはありますか。

そんなあなたのご要望にお応えします。

10年前から山奥の森でほとんど社会との接触を絶って生活して来た家族8人だが、

3ヶ月半前、子どもたちの母レスリーは産後ウツから精神を患い実家近くの病院に入院。

父のベンが6人の子どもたちを育て、サバイバル的な鍛錬と哲学的思索を深める教育を施していた。

ところが、レスリーが自殺。

葬儀への参列を義父から拒否されたベンだが、妻の遺言を叶えるため、子どもたちとともに2,500キロ彼方の葬儀場へと向かう。

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目次

『はじまりへの旅』あらすじ

男2人、女4人計6人の子どもたちに、米北西部ワシントン州の山奥で理想的な真実の教育を試みる両親のベンとレスリー。

資本主義とアメリカ人の生き方に幻滅したベンとレスリーは、山の森の中で、自然と共生しながら、子どもたちに文武両道の教育を行う。

だが、妻レスリーは産後鬱(うつ)で、双極性障害になり、3ヶ月半前に実家の近くの病院に入院した。

父親のベンは自分だけで子どもたちに独特の教育を続けるが、妻のレスリーが手首を切って自殺したことを知らされる。

ベンは、仏教徒だったレスリーの遺志に従って妻を火葬したいと考えるが、電話で義父ジャックからは葬儀に来るな、葬儀はキリスト教式で教会で行い土葬すると言われる。

葬儀に来たら警察に逮捕させると脅されたベンは、一度は葬儀参列を諦めるが、子どもたちは葬儀に参加することを願う。

ベンは、レスリーの遺書に書かれた願いを叶えるため、子どもたちをベンの運転する自家用バスに乗せ、妻の実家のある2,500キロ離れた米中西部のニューメキシコへと向かう。

その道中、そしてニューメキシコで待ち受けていたものはーー。

ワシントン州の山奥から2500キロ離れたニューメキシコへ(GoogleMap

『はじまりへの旅』主な登場人物

キャシュ家

ベン 子どもたちから尊敬される父親。価値観を同じくする妻のレスリーと10年前3人の子たちを連れて山奥での生活を始める。


レスリー 母親。弁護士だったが、子どもたちを哲人に育てるためベンとともに山奥での生活を始める。が、産後ウツから精神を患い自殺してしまう。


ボウドヴァン(ボウ)素直な長男。ギターを弾く。バッハの「ゴールドベルク変奏曲」グレン・グールド版が好き。超一流大学に軒並み合格。

レリアン 次男。反抗期で「パパがママを殺した」と誤解するが後に和解する。リズム感が鋭い。


ヴェスパー 身体能力が高く、理論物理も理解する。レリアン救出作戦で屋根から落ちて骨折する。


キーラー 弓が得意で、頭もよく、歌が上手い。


サージ ガスマスクが好きな8歳の3女。得意な楽器はタンバリンや打楽器?


ナイ 末っ子。四女。ハーモニカを吹く。裸でいるか、着ぐるみパジャマが好き。

ベンの妹の家族

ハーパー ベンの実妹。
デイヴ 夫。
ジャクソン 次男。ゲーム好きな中学生
ジャスティン 長男。高校生

ベルトラング家(義父母・祖父母)

ジャック ベンの義父。レスリーの実父。
アビゲイル ベンの義母。

マキューン母娘(オートキャンプ場)

エレン クレアの母。
クレア オートキャンプ場で、ボウが惹かれキスする女性。

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『はじまりへの旅』ストーリー詳細

解説と感想

監督が妻と自分の親としての決断の違いに疑問を抱いたところから生まれた映画

この映画の発想は、監督・脚本のマット・ロスが、妻と自分が子育てにおける親としての決断の違いに疑問を抱いたところから始まったそうだ。

現代のテクノロジーがそれを困難にしていることは承知しながらも、自分の子どもの人生に『完全に存在』したらどうなるだろうかと彼は考えた。

“alternative-living communities(代替生活コミュニティ)「”と呼ばれるコミュニティで育った彼が、自分の人生から断片を切り取り、映画に反映させた。

クリスマスは祝わず、チョムスキーの誕生日を祝う家族

映画のキャッシュ家は、米国中西部に位置するワシントン州の山奥で生活している。

主人公のベンは、10年前妻とともに、3人の幼い子を連れて、山奥の森に入った。

アメリカ現代社会の病弊や、歪んだ部分を否定し、彼らが考える理想的の子育てをしようとしたわけだ。

昼間は、サバイバーになるための肉体的、精神的鍛錬。円陣を組んで瞑想をし、山道を走り、スクワットなどのトレーニングをし、戦闘訓練を行う。

夜は焚き火の周りでの読書タイム。みな難解な本を普通に読んでいる。父のベンは、読書内容をしっかり理解しているか、自分の考えを述べられるかなどをチェックする。

その後は、ベンがギターを弾き始め、次男のレリアンが箱のイスを叩き始めると、そのリズムを受けてベンが発展させ、他の子たちもタンバリン、ハーモニカ、鼓などで楽しく演奏に加わる。いわば音楽の時間だ。

肉体の訓練だけではない、いわば文武両道の教育だ

精神的論理的支柱は、ノーム・チョムスキーの思想のようで、キャッシュ家ではクリスマスを祝わず、チョムスキーの誕生日を祝う。

次男のレリアンがそれに対し反発して「チョムスキーの誕生日を祝うなんておかしい。クリスマスを祝うのが普通だ」と言った時、ベンは次のように反論する。

「架空のエルフを祝いたいのか? 人権の促進に貢献した実在の人物じゃなく?」

チョムスキーは、アメリカ合衆国の哲学者、言語哲学者、言語学者、認知科学者、論理学者。マサチューセッツ工科大学の言語学および言語哲学の研究所教授だ。

ベトナム戦争を批判し、反戦家の精神的支柱となった。また、アメリカの国家資本主義、報道機関のあり方も批判した。

2005年には投票で「世界最高の論客」 に選ばれている。

チョムスキーは、自分の思想を「啓蒙主義や古典的自由主義に起源を持つ、中核的かつ伝統的なアナキズム」と表現している。

アメリカ社会の病弊から逃れるには?

母親のレスリーが入院したと知った子どもたちの口からは、「病院は『健康なのに死にたい人用』」とか、「アメリカ人は無学で薬漬け!」「米国医師会は、強欲で製薬会社とグル」などの言葉がポンポンと飛び出す。

レスリーが亡くなって、葬儀に参列するためというか、妻の遺言を実行するため、妻の実家があるニューメキシコへ向かうが、その途中、ベンの妹ハーパーの家に泊まる。

ハーパーの息子2人はゲーム好きの普通の子たちなのだが、米国の民主主義の根幹をなす権利章典を聞かれても答えられないが、ベンの8歳のい娘サージは、暗唱して言えるし、自分の考えも言える。

そのサージがワインを飲みたいと言った時も、ベンは平気で飲ませようとして妹から止められる。

しかし、ベンはフランスでは子どもも飲むし、クラックとは違うと言う。

クラックとは、「結晶化させた中毒性の興奮剤で別名『コカイン』だ。1980年代中頃には、都市の人口を半減させた。常用者には子どももいて、些細なことで殺し合っていた」

とベンはサージに説明する。

途中、立ち寄ったレストランでメニューを見たサージが、「コーラって何?」と聞く場面がある。

ベンは、「毒の液体だ」と答える。

末娘のナイも、「おばあちゃんたちの仲間は、ファシスト資本主義だ」と言うシーンがある。

姉のキーラーが「パパの受け売り?ファシストを何だと?」と突っ込むと、ナイは負けずに答える。

「暴力的な国家主義者。大企業に支援される一党独裁の全体主義」

また、「スティーブ」と名付けられたバスの中で、ベンが発した言葉に次のようなものがある。

「『アメリカの本質はビジネスだ』と言ったクーリッジの名言どおり。人類史上、民主主義は社会正義への希望なのだ。なのに市民は社会活動として買い物ばかりしている」

葬儀が行われているキリスト教の教会に入り、強引に壇上にあがり、ベンは妻の考えを伝える。

「妻は仏教徒でした。彼女にとって仏教は哲学です。妻はすべての既成宗教を嫌い、『もっとも危険なおとぎ話であり、無知な者に恐れを抱かせ、服従させるのが狙いだ』と」

以上のような、こうしたアメリカ社会への批判が、ベンと妻のレスリーの精神の根底にあって、山奥の生活に入ったということが分かると思う。

日本でも自然食やマクロビオティック、ニューエイジ、スピリチュアルを好む人は、彼らに深く共鳴する部分が良くも悪くもあるのではないかと思う。

いくらなんでも盗みはダメでしょ?

ただ、スーパーマーケットでベンが心臓発作を装い、騒ぎを起こしている間に、子どもたちが棚から商品を奪うドロボー行為は共感できない。

このシーンを入れた監督・脚本のマット・ロスの意図が理解できない。

同様に、弓の得意なキーラーが、家畜の羊を弓で射ようとしているシーン。

他者が所有する家畜を勝手に殺して食べようとするとは何事かと思う。

深く思索しているはずのファミリーが、何の疑問もなくスーパーの商品や家畜を盗むなら、がいかに素晴らしい教育をしようが、すべてが台無しではないか。

いくら米国の資本主義社会を否定しているにせよ、である。

また、祖父母の家で暮らそうとするレリアンを、「救出」の名目で、夜間、屋根から家に侵入しようという作戦を実行するのも、子どもじみていると感じた。

革命のためなら人を殺すことも許されると考える革命家や、堕胎反対運動で堕胎をする医師を殺す運動家、動物虐待に反対して人を殺す動物愛護家、肉を食う人を平気で傷つけるビーガン(菜食主義者)などの通じる考え方で、もしかすると、マット・ロスは、そういう者たちへの批判として描いたのだろうか。

幼い娘が性的な質問をして来たら、こんなに明解に答えられる?

羨ましく思ったというか凄いなと感じたシーンは、父親のベンが末娘のナイが聞いてくる性的な質問に対し、淡々と真摯に答えることだ。

キーラーが『ロリータ』という本の考察を次のように述べた時だ。

「物語は男の視点で書かれている。だから読者は、不思議と彼に共感しちゃうけど、彼は少女に性的暴行を。でも彼女への愛情は純粋なの。ただ、そう思わされても、やっぱり間違ってる。歳いった男が少女をレイプしてるんだもの。だから、男のことが…憎いわ。同時にかわいそうにも思える」

末娘のナイが、「レイプって何?」と聞く。

大抵の日本人は、何かしらの方法で誤魔化すだろう。

しかし、ベンは違う。

「大抵は男が女性に性交を強要することだ」と説明する。

すると今度は、「性交って何?」と聞く。子どもってそうだよねと思う。

父ベンは、「男性がペニスを膣に入れることだ。みんな鹿を見逃すな」とその質問にも淡々と答えるが、ナイの質問は続く。

「なんで男性がペニスを膣に入れるの?」

「男も女も気持ちいいからだ。男の精子と女の卵子が結合すると赤ん坊ができる」

「膣ってオシッコが出る場所?」

「オシッコが出るのは大陰唇内部にある尿道口だ。だが大きく見れば膣のあたりだ」

葬儀は誰のためか?と考えさせられる

本作は、葬儀についても考えさせる。

筆者の近所の話だが、ある家の主人が亡くなった。

その故人はクリスチャンではなく、むしろどちらかと言えばクリスチャンに批判的だったが、奥さんがクリスチャンであったため、キリスト教式の儀式で葬られた。

このようなことは実際、多いようだ。

葬儀は本人のためではなく遺族のために行われるのが常だ。

本作でも故人は仏教徒であったのに、父母はクリスチャンであるため、キリスト教式で葬儀を執り行なう。

だが、夫のベンと子どもたちは、故人が遺書で望んだとおり行おうとする。

日本では火葬は当たり前だから問題にならないが、もし愛する妻(夫)が亡くなって、遺書に「多くの人が集める公共の場のトイレに遺灰を流して欲しい」とあったら、あなたはどうするだろうか。

エイヴラム・ノーム・チョムスキー(Avram Noam Chomsky)
チョムスキー Photo by Augusto Starita / Ministerio de Cultura de la Nación

1928年12月7日生まれ。アメリカ合衆国の哲学者、言語哲学者、言語学者、認知科学者、論理学者。マサチューセッツ工科大学の言語学および言語哲学の研究所教授 (Institute Professor) 兼名誉教授。妻は言語学者・教育学者のキャロル・チョムスキー。

彼の業績は言語哲学、認知科学分野にとどまらず、戦争・政治・マスメディアなどに関する100冊以上の著作を発表している。

1992年のA&HCIによると、1980年から1992年にかけてチョムスキーは、存命中の学者としては最も多く、全体でも8番目に多い頻度で引用された。

彼は人文社会科学諸分野における「巨魁」と表現され、2005年には投票で「世界最高の論客」 (world’s top public intellectual) に選ばれた。

チョムスキーは「現代言語学の父」と評され、また分析哲学の第一人者と見なされる。彼は、コンピュータサイエンスや数学、心理学の分野などにも影響を与えた。

言語学関連の初の書籍を発行した後、チョムスキーはベトナム戦争の有名な批判家となり、政治批評の本を発表し続けた。彼はアメリカの外交政策]国家資本主義、報道機関等の批判で有名になった。

エドワード・S・ハーマン(英語版)との1988年の共著『Manufacturing Consent: The Political Economy of the Mass Media』など彼のマスメディア批判は、マスメディアなどにおけるプロパガンダ・モデル理論を明確に分析した。彼は自らの視点を「啓蒙主義や古典的自由主義に起源を持つ、中核的かつ伝統的なアナキズム」と述べた。
引用元 Wikipedia

『はじまりへの旅』予告篇(YouTube)

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『はじまりへの旅』データ

日本語のポスター
原題のポスター

題名 『はじまりへの旅』 原題 『CAPTAIN FANTASIC』
製作国 米国
言語 英語
公開日 2016年1月23日(サンダンス映画祭)
上映時間 118分

2016年のアメリカ合衆国のコメディドラマ映画。 監督はマット・ロス、主演はヴィゴ・モーテンセン。
2016年1月23日、サンダンス映画祭で初めて公開された。 また、第69回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に出品された。 2016年7月8日にアメリカ合衆国で劇場公開。

『はじまりへの旅』受賞歴

第69回カンヌ映画祭「ある視点」監督賞受賞 第89回アカデミー賞主演男優賞ノミネート

『はじまりへの旅』キャスト

ベン(Ben)役  ヴィゴ・モーテンセン(Viggo Mortensen)

レスリー(Leslie)役 トリン・ミラー(Trin Miller)

ボゥドヴァン “ボゥ”(Bodevan)長男・役 ジョージ・マッケイ(George MacKay)

キーラー(Kielyr)長女・役  サマンサ・アイラー(Samantha Isler)

ヴェスパー(Vespyr)次女・役 アナリース・バッソ(Annalise Basso)

レリアン(Rellian)次男・役 ニコラス・ハミルトン(Nicholas Hamilton)

サージ(Zaja)3女・役 シュリー・クルックス(Shree Crooks)

ナイ(Nai)4女・役 チャーリー・ショットウェル(Charlie Shotwell)

ハーパー (Harper)ベンの妹・役 キャスリン・ハーン(Kathryn Hahn)

デイヴ (Dave)役 ベンの義弟 スティーヴ・ザーン(Steve Zahn)

ジャスティン(Justin)ベンの甥・役  イライジャ・スティーブンソン(Elijah Stevenson)

ジャクソン(Jackson)ベンの甥・役  テディ・ヴァン・イー(Teddy Van Ee)

クレア(Claire)役 エリン・モリアーティ(Erin Moriarty)

エレン(Ellen)役 ミッシー・パイル(Missi Pyle)

ジャック(Jack)義父・役  フランク・ランジェラ(Frank Langella)

アビゲイル(Abigail 義母・役 アン・ダウド(Ann Dowd

Photos:IMDb

『はじまりへの旅』クリエイター

監督 マット・ロス(Matt Ross)
脚本 マット・ロス(Matt Ross)
製作 ニミット・マンカド(Nimitt Mankad)、モニカ・レヴィンソン(Monica Levinson)、ジェイミー・パトリコフ(Jamie Patricof)、シヴァニ・ラワット(Shivani Rawat)、リネット・ハウエル・テイラー(Lynette Howell Taylor)
音楽 アレックス・ソマーズ(Alex Somers)
撮影 ステファーヌ・フォンテーヌ(Stéphane Fontaine)
編集 ジョセフ・クリングス(Joseph Krings)

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