[小説レビュー]夢枕獏/沙門空海 唐の国にて鬼と宴す 陰陽師瀧夜叉姫 陰陽師夜光杯ノ巻 楊貴妃 東天の獅子 翁秘帖・源氏物語

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夢枕 獏(ゆめまくら ばく)

1951年、神奈川県小田原市生まれ。77年に作家デビュー後、『キマイラ・吼』『魔獣狩り』『闇狩り師』『陰陽師』シリーズ等人気作品を発表し、今日に 至る。89年『上弦の月を喰べる獅子』で、第10回日本SF大賞を、98年『神々の山嶺』で第11回柴田錬三郎賞を受賞。日本SF作家クラブ会員

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沙門空海 唐の国にて鬼と宴す

ベストセラーとなった『陰陽師(おんみょうじ) (文春文庫)』の安倍晴明に続いて、夢枕獏が描く、より魅力的な長編歴史伝奇小説。

今回は、弘法大師・空海が1200年前の唐の国を舞台に活躍する。

西暦804年、若き修行僧・空海は密を求め、遣唐使として長安の都に入った。

当時、密の最高峰と言えば青龍寺の恵果阿闍梨。だがなぜか空海は、なかなか青龍寺へ行こうとしない。

語学の天才、空海は外国人とは思えない流暢な唐語を操り、街の人々と積極的に交流を持つ。

空海と共に入唐し、日本では秀才の誉れ高かった橘逸勢も空海の前では形無しだが、逸勢は空海に友情を感じている。

そんな中で、空海と逸勢は、ある役人の屋敷が猫の妖怪に取り憑かれたという事件に巻き込まれていく。

妖猫は人の動きを透視し、心を読み、未来を予知する術を持ち、青龍寺の僧や空海の仏法の力をもってしても簡単には調伏出来ない。

同時に、長安のあちこちで怪奇な現象が次々と起こるようになる。

どうやら、絶世の美女・楊貴妃に深く関わりのあることらしく、それは朝廷をも揺るがす大事件へと発展していく。

歴史上の人物と、架空の出来事の絶妙なバランスで物語が進展する。

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陰陽師 瀧夜叉姫

おなじみ、『陰陽師(おんみょうじ) (文春文庫)』シリーズの久々の新刊。しかも、『生成り姫』を超える長編である。いやがうえにも期待は高まる。

百鬼夜行に始まり、のっけから奇々怪々な出来事のオンパレード。鬼たちの前に現れたのは陰陽師の道満。人を食ったじいさんだが、今回は安倍晴明、源博雅に劣らぬ活躍ぶりだ。

道満の隠れファンも多いようだから、その人たちには嬉しいかも。

さて、今回の晴明のお相手は、何かと伝説の多い平将門。鉄の身体を持ち、左の眼には瞳がふたつ。六人の影武者がいたという。

将門は朝廷に刃向かったとして、将門の弱点を聞いていた俵籐太に討たれたが、京都に送られて晒された首は恐ろしい形相でわめき続け、ある日突然、消えた。

飛んでいったという者もいる。

肉体は蘇らないようにバラバラにされ、あちこちに分けて葬られたが、それらもいつの間にか盗まれた。

それでも一度は鎮まったかに見えた世の中だが、「将門の乱」から20年後、再び鬼たちが騒ぎ始める。陰謀が渦巻き、陰に隠れていたものたちが姿を現した…。

伝説の将門を軸に、何人もの陰陽師が動く。

謎は意外なかたちで暴かれ、次々と展開して飽きることがない。

人がなぜ鬼になるのか。いや、誰もが鬼になり得る。だから、将門はあなたかもしれない。私かもしれない。

道満は言う。
「もともと、誰かにたぶらかされておるのが人よ。何かにたぶらかされずには、生きてゆけぬのが人じゃ」
「金か」「女か」「恨みか…」。

人だからこそ、鬼にもなる。それが哀しい。

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陰陽師 夜光杯ノ巻

おなじみ安倍晴明と源博雅が活躍する『陰陽師』シリーズの一。

今回は「夜光杯ノ巻」。その名の通り、月の光に照らされながら飲むうまい酒のような、珠玉の短編が九つ、収められている。

ワンパターンと言えばワンパターンだ。

酒を酌み交わす晴明と博雅。なにやら怪しい事件が起こって、晴明が鮮やかに解決する。それは見えているのに、飽きさせないおもしろさはさすがだ。

いつもと同じ、旨い酒といったところか。

個人的には、瀧夜叉姫などの長編が好きだけれど、今回も、最後にほろりとさせられる。

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楊貴妃 天野喜孝/画

「FF」シリーズなどで有名なイラストレーター・天野喜孝と、「陰陽師」などで知られる作家の夢枕獏のコンビが生んだ、絵本のように美しい大型本。

文章はどこかで読んだような話だな? と思ったら、夢枕獏の傑作『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』の楊貴妃のくだりと重なる。

天才・白楽天が詩を詠み、中国唐代の妖艶で魅惑的な美女・楊貴妃が舞う。

美しくも妖しい、幻想的な世界が繰り広げられる。

天野や夢枕ファンならずとも、そばに置けば、桃源郷に遊ぶ仙人の気分に浸れそうだ。

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東天の獅子

著者の格闘技好きは有名だが、本書はなんと、不定期ながら11年かけて書き綴られてきた武術小説だ。

「天の巻・嘉納流柔術」では、講道館柔道の創始者・嘉納治五郎を軸とする、柔術から柔道へと変革していった時代を描く。

姿三四郎のモデルとなった西郷四郎や、大東流合気柔術の武田惣角など、実在の武道家、柔術家が活躍する。

相当に資料を当たったと思われるが、物語自体はあくまでフィクション。

嘉納治五郎と武田惣角の戦いなどは、読んで楽しいところだけれど、実在の記録には無いようだ。

実在する人物を描く難しさも有るだろうが、史実とその隙間の空想で遊ぶのが、著者の企みか。何処までが本当で、どこからが嘘か…。ついつい考えてしまうのだ。

「天の巻」は四巻で完結予定(執筆当時)。その後、おそらく史上最強の柔道家とも謳われた前田光世(コンデ・コマ)へと物語はうつってゆくのだろう。

だが、「天の巻」だけで四巻である。ちゃんと完結するのだろうか? 未完の作品も多い著者だけに、ちょっと心配だったりして。

平安時代中期に、紫式部によって著されたとされる『源氏物語』を知らない人はいないだろう。

しかし、本書はやはり、夢枕獏流の独特の世界なのだ。

当代一の貴公子・光の君には、子供の頃から見えないものが見えた。

皇子である血筋の良さと、類い希なる美貌で、貴婦人たちの憧れを一身に集める光の君の妻、葵の上に、妖しいものが取り憑く。

どうやら六条御息所の生霊らしいが?

普通の陰陽師ではまったく歯がたたず、光の君はついに、妖しいの陰陽師・蘆屋道満にを依頼する——。

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